【水の星へ愛をこめて】における森口博子の昇華について『機動戦士Ζガンダム』後期OP曲
ガンダムシリーズは何十年にもわたり多くの作品があって、ひとつのジャンルといってもいいほどの広がりが現在も続いていってるわけでして、当然ガンダムソングも膨大な数があります。
その中で森口博子は2018年に行われた、発表!全ガンダム大投票 - Wikipediaにおいて、1位【水の星へ愛をこめて】、3位【ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜】という堂々たる結果。
これは、曲が素晴らしいってのはもちろんなんですけど、森口博子の素晴らしさですよ。
歌い手としての成長というか進化っぷりに加えて、ガンダムの曲でヒットを飛ばしたことに対する気持ちのあり方というか態度というか、それがファンとしては嬉しい。
芸能生活いろんな仕事をしてきてる中で、ずっとこの【水の星へ愛をこめて】に向き合い続けてるというのがね。
ということで、この記事では曲全体じゃなくて森口博子の歌唱について主に。
まずはオリジナル。
アイドル森口博子17歳のデビュー曲。さすがに若いし、当時の流行りのアレンジというか、曲調的にもアイドルソングですよね。作曲のニール・セダカも懐かしいなぁ。
一方で歌詞はアニソンらしい壮大さ。そして大人が諭してる感じがある。
そのミスマッチが良いといえば良いんですけど、さすがにいま聴くといろいろと昔の曲だなぁというちょっと拭えないもんも相まってくるであります。
この曲がどう歌われてたかっていうのを時系列的に見て欲しいので、公式じゃない映像を貼りますね。
たぶんデビューして間もない頃の映像。生歌でコレ。すげえ!っていうかもはやレコーディングよりも上手いんじゃ?
別ウインドウが開きますがこれも。
この映像だともろにアイドルですね。声援が懐かしいなぁ。
途中ふらつくところもありますが、生歌そして生バンドバックでこの歌唱ですからね。相当上手いですよこれは。
そこから約半年後には落ち着きも出て歌唱にも磨きがかかってます。
もうすでに、アイドル歌手っていうよりは歌のお姉さん的な感じがしますね。うん、これは良い成長。この時点でも完成されてるといえば完成されてる。
そして、時は流れて近頃の森口博子を聴くと、円熟した歌い手としての味で聴かせるようになっている。
たいていの名曲っていうのは、レコーディングしたときがその歌い手のピークだったりするわけで、あるいはその曲と年齢や時代がベストに合致している状態というか。
懐かしのヒット曲をいま歌うような歌番組を見ると、あぁ、この歌手も歳をとったんだなぁっていう残念さが曲を聴ける喜びの中にも混じってしまいがちなものなのですが、しかし。
森口博子の場合、それがない。
若々しさみたいなものが取り払われて、かわりに年月を経て熟成された澄んだ味わいがありますね。
【水の星へ愛をこめて】の歌詞はやや大人の女性目線なわけでして、となるとやはり人間としての年月を経た上での説得力というものが重要になってくる。
これは、明らかに17歳のときよりもいまの方が曲のテーマに合ってるでしょ。曲が言わんとしてることを完全に消化してるというか昇華してるでしょ。
特にこの映像では、頑張ったリアレンジじゃなく、バックの演奏が当時のままで歌が現在の森口博子っていう最適化状態。素晴らしいを超えて神々しいですわ。
そして、
やがては、少しづつ枯れてくるのです。それは仕方ない。しかしそれもうまく取り入れて、歌い続けてくれるだろうという楽しみもある。そんな曲と歌手の組み合わせですね。
●主題歌DATA
オープニング曲(第24~50話)
『水の星へ愛をこめて』
作詞:売野雅勇
作曲:ニール・セダカ
編曲:馬飼野康二
歌:森口博子
●テレビアニメ『機動戦士Ζガンダム』DATA
1985年3月~1986年2月
アニメーション制作:日本サンライズ